2006/03/31
金曜日,午前中にモサ伝の原稿を書き上げ,午後はプログラミング仕事。来週月曜納品予定分を仕上げ,その次のスケジュールと仕様を確認するためクライアントに電話。一個だけ,どう実現したものか悩ましい機能があり悩む,どーしたもんかな(機能自体は難しくはないんだが,従来の仕様にこの機能を違和感なく追加するのが難物なのだ)。……午後7時過ぎ,やなか珈琲店に電話で豆を予約して家を出る。今夜は新宿で「さよならパソコン通信オフライン」なのだ。1987年のサービス開始直後に使い始めたニフティサーブのパソコン通信,そのTTYのサービスが3月一杯で(ちうことは今夜なわけだけど)遂に終了するのである。あらためて考えると現在つきあいのある人間は,ほとんどがこのニフティやASAHIネットがなければ出逢う� �ともなかっただろう人々である。そう考えると感慨深いもんがあるなぁ。
11時過ぎ,懐かしい面々が詰めかけて盛況だった会場を後にし,ミヤイチ君の案内でASLヤマダさん,コイケさんと共に赤坂某所(これはボカシてるわけぢゃなくて酔っぱらってたのでよく覚えてないのである)へ二次会へ。なんだか知らぬが手品を見せてくれる楽しい飲み屋で午前1時過ぎまで歓談。……ところがこのあとが良くない。解散後,南に向かうタクシーが全然つかまらない。アークヒルズ辺りのタクシー乗り場でしばらく待ったがダメ,あきらめて(つうか途方に暮れて)歩き出し,麻布に入ったところでようやく空車が。地獄に仏というかなんというか,家にたどり着いたら午前3時。酔いもヘチマもすっかり醒めてしまいましたがな。やれやれ。
2006/03/30
なんとか昨日の嘆願は認められ,今週前半の苦心が水泡に帰すという最悪の事態は回避。来週月曜日納品分のスパートにかかる。早いとここれを終わらせてしまわないと来週のモサ伝の原稿が書けない。神楽坂方面のデータベースもあるし。……てなわけで,振り返ると今月は読書量ががくんと減ったような気がするが,長らく枕元にあったチャールズ・ブコウスキー著「町でいちばんの美女」を読み終える。これ,一回読んで売ってしまった本なんだが(奥付によると初版は1994年になってるからそのころだな),昨年の何月だったか,神田の古書店街で300円均一のワゴンの中にあるのを見て思わずまた買っちゃったんである。
読んだヒトには説明不要で,読んでないヒトには説明不能(少なくとも読みたくなるような説明は,ね)というのがこの作品の最も真実に近い説明のような気がするんだが,読みたくならなくてもいいからどんな本かだけは知っておきたい,できればフジモトの言を根拠にして知ったかぶりだけしたいというヒトのために乱暴に概括を試みると……,こほん,つまりこのブコウスキーというヒトは「悩まない太宰治」みたいなヒトであり,大宰がその自意識ゆえに頭のなかで想像するだけで身もだえしてしまったようなあんなことやこんなことをまんまやってしまい,またやってしまう人たちとつきあい,それを原稿にしてわずかな金で売り渡すとそれをまた全部飲んだり女を買ったりしちゃう,で,その売り渡しちゃった原稿がこれな� ��である……と,こんな感じだろうか。
例えば表題作,主人公の「私」は町でいちばんみにくい男で,それがなぜか「町でいちばんの美女」であるキャスに惚れられる。キャスは常に容姿ではなく人格として認められることを欲しており,その欲求のあまり無意識のうちにみにくくなろうとして自傷行為を繰り返しているという難しい女。「私」はキャスを本気で心配するが,彼が彼女を気づかうほど,彼女のほうはそれが自分の美しさ故であると苛立つ,そして……。
と,こうアラスジだけ書くとなかなか文学的なんだが,これはオレが意識して作品に使われている隠語や卑語,言い回しを使わず,具体的な場面を描写するのも避けて書いているからで……。あれ? なんだか「ブコウスキーの小説はその卑猥でグロテスクで下品で救いのない描写の底に人生の真実を隠しているんだ」てないい話になっちゃったみたいで困っちゃうんだが,オレが言いたいのはそうではなくて,たとえその底に人生の真実が隠れているとしても,ブコウスキーがそれを覆うのに使っているものの卑猥さグロテスクさ下品さ救いのなさは半端ではなく,しかも時には人生の真実なんて隠されてなかったりするんだよ,ということなんである。解りましたか(解んないよね)。
2006/03/29
午前中は家で仕事,午後イチ,調布に赴いてミーティング。おかげさまで夏から秋にかけての仕事がほぼ確定し安堵のため息。しかし好事魔多し,6時過ぎに家に戻ると月曜,火曜,そして本日午前中にやった仕事のあらかたが無駄になりそうな報せが……。確かにスケジュールでは4月前半の作業予定だったから,現段階で「やっぱりその新機能の実装はなし」ってのアリだと思うかもしれないけれど,これを実装すると他の機能にもいろいろ大きな影響が波及するので,今行っている直接関係なさそに見える作業の中でもその準備はしておったのである。
うう,具体的に書けないのが隔靴掻痒だが,つまりこのあと4月,ここにずどんと高架式の高速道路を造る予定だったので,現段階でその支柱が立つはずのところにある家に立ち退いてもらったり日陰になっちゃう家に挨拶に行ってたりしていたのだ。ちうか,それを見越してやっていたから月曜からの作業はなんだかんだと難しい部分があったのね。なのにようやく目処のついたその細かな作業をパーにするのかよ,ちと待てこら,と。あわてて関係方面に電話して計画存続を訴えてはみたが,どうなることやら。
その電話が長引いたせいもあって本日の録画消化は連ドラ1本。「スターゲイト」の第166話「プロメテウスの受難」。アトランティス調査を指揮することになった元司令官ハモンド(ドン・S・ディヴィス)がSG基地を訪れる。連絡の途絶えた先遣隊の捜索のため,ダニエル(マイケル・シャンクス)を同道したいというのだ。この計画へのダニエルの参加に反対だったオニール(リチャード・ディーン・アンダーセン)だが,恩人でもある上官には逆らえない。しぶしぶダニエルのアトランティス行きを承諾する。地球を発ったプロメテウスは,目的地までもう少しという場所で人間の声による救難信号を受信,コースを変更して救助に向かう,が,待っていたのは動けなくなったゴアウルド船アルケシュと,スーパー戦士の装甲を着け� ��女性バーラ(クラウディア・ブラック)。彼女の目的はプロメテウスを乗っ取ることだった……。
米国では既に放送中の派生シリーズ「スターゲイト:アトランティス」の伏線となるエピソード,どうやら今回の話で「連絡が途絶えた」と言われているチームが「アトランティス」の主役達ということになるらしい。日本でも今秋から放送が始まるらしいので楽しみである。それとは別に,今回登場した謎の女バーラはなんとなく今後何度も登場するジュンレギュラーっぽい扱いをされていたと思うんだがどうだろうか。HDレコーダーからリアルタイムのニュースに戻ると,先日転落死しているのが発見された小学生はどうやら何者かによって15階から投げ落とされたらしいという。なんだかこの国は確実に悪い方向に転がり始めている気がするな。
2006/03/28
ようやく勤労意欲が復活,オン・スケジュールで仕事をこなす。晩にはお馴染み「ケロロ軍曹」を新旧4回分。その内容は,第11話 「ケロロ小隊 テレビに出演せよ!であります」,第12話 「すもも アイドルは宇宙をこえて であります」&「ギロロ 戦場のちいさな天使 であります」,第101話 「ケロロ小隊 ペコポンが静止する日!? であります」,第102話 「ケロロ小隊 ペコポン!! 滅び行くか愛の星よ!! であります」。
旅モノテレビ番組を皮肉った第11話も面白かったが,ここはやはり大長編となった(次回第103話で完結するらしいが)第101話からのガルル小隊による地球侵攻話を取り上げなければなるまい。ギロロの兄であるガルル中尉率いる……あれ?4人組に見えたな,ケロン軍の小隊ってみんな5人組ぢゃないの? あ,第102話の最後でケロロを洗脳(?)して仲間(しかも大尉……なんで?)にしたからいいのか? ちうか前回「タイトルバックの謎の5人組」とか書いたがよく見たらあの餌は4人組ではないか。思い込みというのは怖いもんだな,一桁の数を数える手間さえ省かせてしまう。
とにかくその4人組が現れ,一向に進展しない地球侵略を一挙に実現しようとする。いやはやなんとも突然ダッシュでシリアス(でもないか)な展開になったが,どういう結末を用意しているんだろ。まさか,あの冷酷そうなガルルまでガンプラにハマって侵略をサスペンドするとかってオチぢゃないよね,ね? おおそうぢゃ,来週だか再来週だかから放送時間が変わるとか字幕が出ていたな,HDレコーダーの予約を変更しておかねば。
続いてもう1本,旅客機パニックモノのTVムービー「エアポート '02」(ジョン・カッサー監督)を観る。以前北大のスミ君だったかが「潜水艦映画にハズレはない」とか言ってたが(オレは基本的に戦争映画を観ないのでこの説の当否は判定できない),同じようにオレは「旅客機パニックモノにハズレは少ない」と思ってるので,こういう低予算映画でも一応観るのである(あ,あとホラーも観るな,あっちはハズレばっかだけど)。
プロットはよくあるヤツで,会社の経費削減による燃料不足が真の原因である事故の責任を取らされて休職中のパイロット,マイク(エリック・ロバーツ……あんまり似てないがジュリア・ロバーツの兄貴らしい)がロンドンの空港で……何やってたんだろ? 飛行機待ちかなんかしていると,会社のやつがやってきて整備不良と悪天候で遅れたボストン行きの副操縦士を頼めないかと言う。組合の規則で決まっている拘束時間をオーバーしたので本来のパイロットを下ろさなければならないんだそうな(へぇ,そういう規則があるのか,と思いました)。
操縦席に座ってみると,彼と同様急遽呼び寄せられた機長は会社ベッタリの官僚的なヤツだし,客室乗務員のケイティ(アレキサンドラ・ポール)は昔の恋人。客席には妻殺しの凶悪犯人を護送中の……ご丁寧に飛行機が苦手の刑事に,新婚旅行中のメカニック。そして整備不良の飛行機は大西洋上で貨物室のドアを吹っ飛ばし,緊急着陸のためアイスランドに向かう……。もう話の展開が想像つくと思うが,それでも細かい点では予想を裏切る部分もあり,ワタシは結構楽しめました。TVムービーとしてはかなりの高得点をあげていいかと。
2006/03/27
1日半ごろごろしたら休み癖がついてしまってやる気にならず,午前中マシンに向かってはいたものの進捗はほぼゼロ(ま,一応仕様を満足するためのアイディアをいくつか試して「ダメ」という結果を出してたわけでボーっとしてたわけではないんだけどね)。大脳皮質の奥深くまで煮詰まってしまったので,気分転換を兼ねて武蔵小山まで靴を買いに行く。ここんとこなんだかやたら靴下の踵のところに穴が開く,新しい靴下が3度ほど履いただけで穴が開くという現象が続いておったのだが,調査の結果その原因が靴にあることが判ったのである。踵のところのクッションがすり切れていて革とキャンバス地の縫い目が直に靴下と擦れるようになってたのだ。
……午後3時過ぎ,新しい靴を履いて(特価3,980円のナイキ。旧靴下リッパーはお店で処分してもらうことに),林試の森を散策してから帰宅。昨日,今日と暖かかったせいか桜は六分から七分咲き。花見は今度の週末が最後のチャンスというところか。再びマシンに向かい,なんとか仕様を満足できる手法を見つけて本日は閉店。晩のお楽しみは座頭市映画を2本に連ドラを1本。
まず最初は……これは好きな映画でした,「新座頭市 破れ!唐人剣」(安田公義監督)。例によってやくざの一団に追われながら野州間々田宿付近にやってきた座頭市(勝新太郎)は,南部藩の侍に斬られて瀕死の唐人から少年小栄(香川雅人)を託される。続いて現れた唐人剣士・王剛(ジミー・ウォング)に要求されるまま少年を渡した市だったが言葉は通じず,ねぐらと定めた水車小屋での偶然の再会も,南部藩に追われる王に「俺をつけているのか」と怪しまれる。小栄のつたない通訳で,彼らが間々田にある福龍寺という寺を目指していると知った市は案内を申し出るが,途中宿を借りた農民与作(花沢徳衞)の一家が南部藩の意を受けたやくざ藤兵衛一家に惨殺されてしまい,王は市こそ密告者だと思い込む……。
香港のカンフーアクションスター,ジミー・ウォングを日本に連れてきて隻腕の唐人剣士とし,盲目の座頭市と戦わせるというキテレツなアイディアは勝新本人のものらしいが,さすがと言うべきだろう。これだけ見るとほとんど「超人対決」だが,言葉のギャップによる相互不信を底流にして異色ながら味わい深い時代劇に仕上がっている。浜木綿子の仇っぽいお色気もマル。オレとしては三波伸介,戸塚睦夫,伊東四朗のてんぷくトリオが3人揃って登場するのがなにより嬉しかったりするんだけど。
もう1本の座頭市は初見,「座頭市御用旅」(森一生監督)。街道はずれの葦原を行く市は,何者かに斬られた臨月の女に遭遇,苦心惨憺の末男の子を取り上げるが,女は「野州塩原の佐太郎に……」と言い残して息絶えてしまう。仕方なく赤子を抱えて塩原に向かう市だったが,付かず離れずに彼を追い,隙あらば石を投げつける少年の存在に往生する。少年・健太(岡本健)は母がやくざに襲われるところを見ておらず,市が母を殺したものと思い込んでいるのだった。やがて塩原に着き,佐太郎の妹お八重(大谷直子)に赤子を託した市は,気骨ある岡っ引きの藤兵衛(森繁久彌)に出会い,その人物に感じ入る。
この藤兵衛の威光でやくざがいない塩原宿だったが,これに目をつけて矢板宿から鳴神の鉄五郎(三國連太郎)という貸元がやってくる。名目は貸し金の取り立てだが,その実老齢の藤兵衛を引退させ自分が十手を預かって二足わらじで塩原宿を支配しようという腹積もり。佐太郎(明石勤),お八重兄妹も鉄五郎に借金があり,殺された佐太郎の女房がその二十両を奪われたことを知った市は,自分の首にかかった賞金をこれに充てようと藤兵衛の元に……。善意が誤解されて主人公が善人達に憎まれるというパタンは,そうと判っていてもハラハラする,なんちうか時代劇プロットの「王道」ですな。ラスト,高橋悦史演じる浪人役の考えてみればもったいない使い方も勝新ならでは。
最後は2週間ぶりの連ドラ「LOST」。第19話は「啓示」。前回ハーリーの過去とともにその一端がかいま見られた数字の秘密は「おあずけ」。このドラマ,もういくつ「おあずけ」があったのか思い出せないが,製作者側も忘れちゃってるってことはないよな,頼みますよ,ホンマ。で,今回は森で見つけたハッチ(だからこの脇にあの数字が書いてあるんだけど)を開けようと躍起のロックの過去暴き第2弾。それは数年前,幼いころに里子に出され,両親のことを何も知らなかった彼の元に突然母親を名乗る女が現れた。その母親から芋づるのように大金持ちの父親の存在を知り「再会」を果たした彼は……。
いやはやなんともひでぇ話。これ,「『小公子』という話で少年セドリックを祖父が引き取ったのは彼の臓器が目当てだった」という,まるで「大人のための残酷童話」みたいなネタだよね。……とにかくそのロック,夢で森にプロペラ機が墜落するのを目撃し,ブーンと共にそれを発見するのだが,突然,事故前のように足が動かなくなってしまう。おいおい大丈夫なんか,と思っているとまた来週なのであった。
エデンの園のどのハッパー
2006/03/26
日曜日,昨日の勢い(むしろ勢いのなさというべきか)で今日も1日家でひたすらごろごろするオフ。深夜に放送されたNBA,ピストンズ vs ペイサーズを観戦。なぜか前半だけ,1時間しか録画されてなかった(EPGで予約したんだからオレのミスではないぞ,いったいどーなっておるのだ)のでWebで勝敗を確認(75-72でデトロイトの勝ち)。
続いてはモーガン・スパーロックの「30デイズ」を2本。第3話は「イスラム修行を30日間」。敬虔なキリスト教徒の男性が,全米で最もイスラム教徒の多い街,ミシガン州のディアボーンでムスリムの家庭に30日間ホームステイするというもの。着るもの,食べるものを彼らに合わせ,コーランを読むというところまではなんとかなるが,自分の信仰を裏切る気がしてどうしても礼拝に参加できない。……平均的なアメリカ人というのはこんなもんかも知れないが,こいつユダヤ教とキリスト教とイスラム教がみんな同じ唯一神を拝んでるってことを理解してないのだ……平均的なニホン人もそう? とにかく最初偏見ビシバシだった彼も30日後にはなんというか「常識」めいたものを身に付けて帰ってくる。どんな常識かって? この世界に15億人もいるムスリムがみんなテロリストなわけがないだろうってことさ,もちろん。次の第4話も似た話で「ゲイと一緒に30日間」,これまた敬虔なキリスト教徒で「聖書にそう書いてあるからゲイは罪である」と確信している若者が,サンフランシスコにあるゲイ達の街カストロ地区に30日間,これまたホームステイするというもの。……オレは登場する4つのどの立場でもないので(クリスチャンでもムスリムでもないし,ゲイでもなければ「ゲイ=罪」派でもない)却って話の構造がよく見えたような気がするんだが(ついでに言うと「岡目八目」はオレの座右の銘でもある),偏見というのは実に巧みに物事をすり替えるのだな。
第3話でムスリムの生活を体験した彼は,事実上国家を超えて存在している宗教(そりゃ超えてない宗教もあるけど一応,キリスト教,イスラム教は国家を超越してるよね)間の相互理解の問題を,自分でも気がつかないうちに国際政治上の利害や対立にすり替えて考えていたことに気付かされる。大部分のムスリムはアメリカにテロをしかけようなんて思ってないし,大部分のクリスチャンもムスリムを根絶やしにしようなんて考えてない。当然だろ? 彼は「だけど9.11を起こしたのはムスリムだ」というが,それを言ったら「ナチスもKKKもリッパなクリスチャンだった」んである。同じような展開が第4話にもあって「聖書に罪だと書いてあるのにあなたはそれを認めない」とカストロ地区の教会でレズのシスターに詰め寄る彼は「聖書には殺すなかれと書いてあるのにあなたは軍隊にいったのでしょ?」と言われて「それは国を守るためだ」と強弁する。が,国を守るためなら従わなくていい宗教に,なんで個人的な性欲の問題では従わなくてはいけないのか。しかもそれに苦もなく従えるヒトがそうでないヒトにそれを強制できるとまで言うのか。それは自分の性的嗜好に合わないものを排除するための方便として宗教を援用してるだけぢゃないのか……。
どちらのエピソードも最後は相互理解が出来てハッピーエンドに終わるが(特に第4話の彼が30日後すっかりワインとチーズの通になってるのが可笑しい),撮影開始時点ではこうならない可能性だってあったろう。特に第3話は全米ムスリム教会(だったかな? うろ覚えだが)から表彰されたそうだが,それだけのことはあると思う。保険のCMの合間にお笑いタレントがいぢりあってるだけで過ぎていってしまう1時間足らずの時間でも,やる気になればこんだけのことが伝えられるのだ。電波握って浮かれてるヒト達にこそこういう番組を観て欲しいですな。
晩にはサトーが送ってくれたいかなごの釘煮をつまみにウイスキーを啜りつつ「穴 / Holes」(アンドリュー・デイビス監督)を鑑賞。無実の罪で矯正施設(これを見るとアメリカには「私立」の矯正施設があるんだな,ちょっとびっくり)送りになった少年スタンリー(シア・ラビオフ)は,互いをあだ名で呼びあう同房の少年たちと共に,果てしない荒野にひたすら穴を掘る作業をさせられる。所長(シガニー・ウィーバー)は,穴を掘るのは人格形成のためだと言うのだが,何か彼女の気に入るものを掘り当てたらその日の作業が免除されるなど不可解なルールもあって……。
原作はルイス・サッカー作のミステリ小説(未読)。スタンリーの家系,所長の家系それぞれの因縁が複雑に絡み合う謎解きはなかなかのもの。出演者も上の2人の他,ジョン・ヴォイト,パトリシア・アークェット,ティム・ブレイク・ネルソンにヘンリー・ウィンクラーなどそれなりの芸達者ぞろいで面白く仕上がっている。そうそう,救貧施設に自分が寄付した靴を盗まれるメジャーリーガー役で,元レイカーズのリック・フォックスが出演。「OZ」のベイヒュー役といい,これからは役者としてやっていくのかしら。それにしても,レイカーズではけっしてデカイ方ではなかった彼がこういう映画で普通のヒト達と同じ画面におさまると異常にデカイのにはいつもながら驚きである。
2006/03/25
土曜日,目黒川の桜祭り開幕だが実のところまだ一分か二分咲きといったところ。午前中マシンに向かうが気分乗らず,一段落ついたところで午後はお休みと決める。昼飯は頂き物の乾麺「自然薯蕎麦」というのを茹でてたぐり,午睡のあとショーン・コネリー主演のSF映画を2本。まず1本目は1974年の「未来惑星ザルドス」(ジョン・ブアマン監督)。西暦2293年。環境破壊による文明崩壊のあと,人類は不死である支配者たちと互いに殺しあう獣人に分化していた。支配者層はザルドスと名付けた石像を宙に浮かべ,神として獣人に武器を与えて殺し合わせたり,穀物を栽培させて収奪したりしていたが,獣人の中から突然変異で誕生した知性ある存在,ゼッド(コネリー)は穀物にまぎれて石像にひそみ,彼らの「神」の正体を知る旅� ��でかける……。
初見なんだが,実はこの映画については思い出がある。これが公開された74年,オレは中学1年生くらいで,生まれて初めて(そして以降買ってないのでそれが最後となったんだけど)「明星」という芸能雑誌を買った。付録についてた山口百恵の水着ポスター(当然スクール水着である,時代だな)が欲しかったような気もするが,もしかしたら他にもなんか理由があったのかも知れない。
とにかく,その「明星」の巻末近くの映画紹介ページみたいのに取り上げられていたのがこの映画だったのだ。で,それがあんまり好意的な評ぢゃなかったような記憶があるのだが,今回初めて観てなるほどと思いました,この映画はつまり当時のカウンターカルチャーの賜物で,日本で映画評を書いていた層にとっては(明星には植草甚一さんは書いてなかったと思うから)「なんだこりゃ?」だったんだろうな。今観ると,当時としてはキワドかったろうお色気シーンもなかなか楽しいし,テーマもそれなりに現代的……そっか,いま気がついたが今上映中の「イーオン・フラックス」にちょっと似てるのだ。この脚本,ブラピあたりを主役にして,今の技術でリメークしたら面白いと思うがなぁ。
もう1本は1979年,ロナルド・ニーム監督の「メテオ」。こっちはいわば「ディープ・インパクト」や「アルマゲドン」の先駆になった作品。早い話が「隕石地球直撃モノ」(そんなジャンルあるのか)ですな。未知の彗星が火星と木星の間にあるアステロイド・ベルトにぶつかり,小惑星の中でも最大と言われるオルフェウスを粉砕,その破片がやがて地球を直撃することが判明する,その規模はなんと人類滅亡級。……NASAの長官ハリー(カール・マルデン)は,極秘裏に配備された対ソ連用ミサイル衛星ハーキュリーズをこの破片にむけて発射し,地球到達前にこれを粉砕しようと計画,ハーキュリーズの設計者であり,その軍事転用に反対してNASAを去ったポール(コネリー)を招聘する。しかし空軍のアドロン(マーティン・ランド ー)らはこの計画に反対。アメリカがソ連に向けた衛星兵器を配備していたことが明るみに出るのは許せない,と言うのである。
ところが調査が進んで事態は急変。地球に向かって飛んでくる破片は予想以上に大きく,ハーキュリーズに用意されている14基の核弾頭では粉砕どころか進路を変えることさえ難しいと判る。ことここに至って合衆国大統領(ヘンリー・フォンダ)は決断し,ハーキュリーズを「このような事態に備えて配備していた」と発表,同様の防衛施設を配備しているであろうソ連にも協力を求めたい,という演説を全世界に向けて行うのだった。……さっき挙げた後発の2作に比べると,非常に国際政治というか,マクロな視点が強調されたシナリオになっており,ああそういえば忘れかけてたが「冷戦」つう言葉があったよなぁ,と懐かしい。ワシントンもクレムリンもいざとなれば人類みんなのために働いてくれる,と素直に信じられた時代� ��映画。今は……ちょっとそうは思えないもんなぁ。
夕刻,休日出勤したカサギから電話が入り油面地蔵通りのこだるまで一杯。カサギの部屋にこないだ買った(結局買っちまったぜ)「銀河ヒッチハイクガイド」(ガース・ジェニングス監督)を持ち込み100インチのスクリーンで堪能する。去年六本木で観たときはちょっと首が痛くなるような席だったからね。……とにかくそういうことで,なんか全面的に「SFの日」でありました。
2006/03/24
終日仕事。昼飯食いながらのニュースで例の堀江メールの提供者の名前が明らかになったことを知る。週刊誌とかでは既にお馴染の名前なのに,国会で口にするとなるとこんなに大掛かりな舞台が要るんかい,と嘆息。ついでながら,昨日の二次会で話題になったので「Winny問題についてワタシがずっと疑問に思っていること」をここに書いておく。あのさぁ,あのソフトの作者って確か「著作権法違反幇助」かなんかの容疑で捕まったんだよね? ちうことは理の当然として,あのソフトを使うことイコール著作権法違反の容疑がかかってもしょうがないってことにならないの? なるでしょ? なのに当のケーサツやボーエーチョーその他の役所や会社に関して「ここが漏洩元でしたけしからん」ちう話は出ても「このヒトを著作権法違反の疑いで取り調べ中です」という話が聞こえてこないのは何でなんだ? 誰か偉い人,教えてくれんか。
8時ごろまで働いて映画を2本。まず1本目はウディ・アレンが1985年に撮った映画へのオマージュ,「カイロの紫のバラ」。舞台は1930年代のニュー・ジャージー,大恐慌で失業したきり酒とギャンブルにおぼれている夫(ダニー・アイエロ)に代わり,ウェイトレスとして家計を支えているセシリア(ミア・ファロウ)の唯一の楽しみは映画。お気に入りのギル・シェバード(ジェフ・ダニエルス)が出演している新作「カイロの紫のバラ」はもうこれで5回目。……とそのとき,ギルが演じている人物,トニー(当然ながらジェフ・ダニエルズの二役)がスクリーンの中から彼女に目を留め「また来てるね」と。言いながら彼はスクリーンから抜け出してきてしまい,残された登場人物たちは途方に暮れる……。
映画の登場人物が現実の世界に出てきてしまう,というネタではシュワルツェネッガーの「ラスト・アクション・ヒーロー」(ジョン・マクティアナン監督)というのがあったがスケールはともかく出来は先行のこの作品の方が数倍よろしい。トニーが持っているお札が映画用の小道具だとか,セシリアにキスして「フェイド・アウトは?」と訊くとかの粋な小技が効果的。冒頭でその音楽が聞こえ,エンドロールで映像も現れるフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのダンスシーン(映画は「トップ・ハット」)の使い方も見事。
もう1本はスティーブ・マーティンとクイーン・ラティファが共演したコメディ「女神が家にやってきた」(アダム・シャンクマン監督)。仕事にかまけて家庭を省みず,妻ケイト(ジーン・スマート)に出ていかれてしまった弁護士ピーター(マーティン)。法律相談専門のチャットで,敏腕・金髪の女性弁護士と知りあい今夜が初デート。ところがやってきたのは刑務所で法律を学んだという女性脱獄囚のシャーリーン(ラティファ),無実の罪を証明して自分の前科を消してくれ,と言うのだった……。
うーん,正直この2人を組ませるのならもっと面白い脚本を用意しろよ,と思わないでもない。キツい(キツ過ぎるという向きもありそうだ)人種差別ギャグと,ケイトの妹役のミッシー・パイル(オレはこの女優さんが大好きなのだ)とラティファの男顔負けの格闘シーン以外に観るとこなし。なによりストーリーの一方の核であるはずのシャーリーンの冤罪の真相に芸がなさすぎてしらけまくり。
2006/03/23
昼間はいつもの通り仕事。夕方から銀座は文芸春秋画廊の3F,メディアネットワーク銀座文化サロンにて第101回目のデジコンサロン。今回のは前々から楽しみにしてたんだよね。……どっから話を始めようか。三谷幸喜監督の「ラヂオの時間」という映画をご存知だろうか。これは脚本コンクールで1位になったラジオドラマの生放送の話なんだけど,出演者たちのわがままで次から次へと設定が変わり,そのせいで予定していない効果音が必要になる。そこに出てくるのが藤村俊二演じる警備員のおじさん。実はこのヒト元音効マンで,どんな音もたちどころに作ってしまう……。本日のスピーカーは,この役のモデルになった元ニッポン放送の伝説的音効マン・南二郎氏なんである。
お話に先立って,サロン世話人であるデジハリ大学院講師(教授?)のニシオさん(南さんはニシオさんの先輩である)の生徒さんが卒業制作で作ったという20分ほどのドキュメンタリーを観る。引退後北海道に住む南さんのご自宅を訪ね,さまざまな小道具(あんまり大道具はない,スタジオに持ち込めないからね)を使った音の実演を記録したもの。これがすごい,引き戸ひとつ取っても南さんがやると,ちゃんと障子なのかふすまなのかガラス戸なのかが目をつぶっていても判るのである(ちうか逆に,わりと音だけでは判んないもんなのだ)。感動的だったのはテーブルに皿を置く音。ホンモノの皿一枚をテーブルにごとんと置いても音だけでは皿とは判らない。皿を二枚にしてごとんの直前に瀬戸物の擦れる音をかすかに入れ� �。するとあなた,魔法のようだがこの音はもはや皿以外のナニモノでもなくなるのである。
VTRの後はナマのお話,音効は音に演技をさせなければならない,という話は深い。例えば誰かがドアを叩きながら呼びかける。実際には「ドちょっンと,ドおくンさん,ドいるンんでしょ?」と言う具合になるわけだが,芝居がこれでは聞きにくい。だから「ドンドンドン(ここで微妙な間を挟む)ちょっと,おくさん,いるんでしょ?」と……。笛を使って出すフクロウの声も単純な声帯模写ではなく,そのシーンのイメージに合わせて吹き分ける等々,いやはや面白うございました。和民での二次会,目黒駅前天使のわけまえで三次会(ってこれは一人だけど)の末久々の午前様。
2006/03/22
午後イチ,データベース仕事の打ち合わせのため神楽坂へ。ここには書かぬが有り難きいただきものあり,多謝。復路車中にて奥本大三郎著「書斎のナチュラリスト」読了。奥本先生の本業は仏文学者なのだが,そちらのお仕事はちっとも知らない。私は虫屋としてのセンセイの著作を追いかけていた時期があり,これも先日どこやらの古本市で見つけ,そのあたりを期待して購入したもの。だって題名が「ナチュラリスト」だからね。
読んでみると名著「楽しき熱帯」の身辺雑記版といった風情で,話題は虫に限っていないがこれが実に面白い。世界中でその喰い方まで書いてある魚類図鑑が出版されているのは日本だけだなんて話もいいし,週刊誌の中吊り広告にあった「宮沢りえ激ヤセ!」(こう言って騒がれたことがありましたよね)の文字から動物学でいう「pick order」(つつきの順序)に言及していじめの問題を考える一項も素晴らしい。
しかしなんといっても一番の傑作はセンセイが自転車を盗まれた話。今まで13回も自転車を盗まれているという友人の「盗まれた自転車は必ず出てきます」という言葉を信じて界隈を探索する姿には,申し訳ないけど笑いが込み上げてしまう。そういえば先日新聞で読んだのだが,センセイ最近自宅を改造して「虫の詩人の館」というのをオープンさせたのだそうで,これは是非一度見学にいかなければ,と思っているのである。あ,「ファーブル昆虫記」も揃えたいんだけどなぁ。
晩はNBA,クリッパーズ vs ホーネッツ。ホームタウンであるニューオーリンズの水害で,今年ホームコートでの試合が3試合しか組めなかったホーネッツ。この試合はその3試合目で,今までの2試合は負けている,ついでにチームは8連敗中でカンファレンス9位に落ち,プレイオフ出場がヤバいぜという背水の陣なのであった。相手は好調のクリッパーズ,永年ドアマット(プレイオフに出られず年がら年中踏みつけにされているチームがこう呼ばれる)に甘んじてきたが今年こそ9年ぶり……だったかな,でプレイオフ出場が見えている。なんだかどっちも勝たせたいようなカードだったが,いまなお台風の後遺症に苦しむ地元のファンに勝利を見せたいというホーネッツの思いがクリッパーズを圧倒,120-108で勝利を収めた。
聖パトリックの歴史はどうですか?
続いては録り置きの連ドラ「スターゲイト」の第165話「レプリ・カーター」。かつてサマンサに恋して裏切られ宇宙の彼方に去ったレプリケーター人間フィフス(パトリック・カーリー)が作ったレプリケーターのサマンサ(アマンダ・タッピングの二役)からSG基地に連絡が入る。彼女によれば,アスガードが開発した対レプリケーターの最終兵器,ディスラプターへの防御技術を完成したフィフスが再びこの銀河系を攻撃しにやってくる,と言うのだが……。
プロットとしては面白いが今後の展開に苦労しそうな話。もしかして,サマンサへの恋愛感情をふまえないと登場する脚本が書けないというやっかいなキャラになってしまったフィフスを始末したかったか。サブ・ストーリーとも言えないくらいちょろっとだが,新シリーズ「スターゲイト・アトランティス」に繋がる台詞が散見。確かこの夏くらいから放送が始まるんだよね? FOXでは「24」の第3シーズンも始まるし,またぞろ連ドラで忙しくなりそうである。
2006/03/21
春分の日にしてお彼岸のお中日,WBCの決勝戦の日(まぁアメリカでは昨日だけど)。朝早く家を出て五反田駅でカネコさんと待ち合わせ。そのまま山手線に乗って秋葉原へ。そーなのだ,みんながWDC決勝戦で日本を応援している隙に,予約不能(電話して聞いたら休日は4月の何日かまで埋まっていると言われた)の交通博物館「旧万世橋駅遺構特別公開」の当日枠に滑り込もうというのである。……が,秋葉原に着いてみると「てっちゃん」たちは野球になんかさほど興味がないのであった(と,軽々しく断定したりして)。開館20分前だというのに行列はぐるりと角を曲り,万世橋のたもとあたりが最後尾ではないか。
それでもなんとか,遺構見学コース11:30の組に入ることができ,そのパスを首から下げて集合時間(10分前の11:20)まで一般展示を見学。5月に閉館してさいたま市に移転するということで,遺構公開の他にも「乗り物模型蔵出し大公開」など見ごたえのある展示がたくさん。当初「うーん,11:30まで1時間半弱あるではないか(9:30に入館したがパスを貰う列に30分以上並んでた)」などと言っていたのに,最後は集合時間に間に合わないぞと駆け足で回る羽目になった。
そうして待望の旧万世橋駅遺構,展示室の一角にある小さなドアをくぐり抜けるとそこは赤レンガのアーチの下。関東大震災で焼け落ちた辰野金吾設計の駅舎の一部がそのまま残っているのである。そこで簡単な説明フィルムを見せられて数分の撮影タイム。続いて狭い通路を行く。両側タイル張りの階段を上ってガラス張りの明るい空間に出ると,そこは博物館の屋上で,旧万世橋駅のプラットフォームなのであった。おりしも中央線が通りすぎ,見学者から「おお」の声。青空の下そこだけ明治が居残ったような「しばいせんま」の看板を撮影して見学終了,11:50。帰り際にちらと見たら,この時点で当日見学枠は最終16:15まで全て満杯であった。
昼飯は久々,丸五のヒレカツにしようと昌平橋を渡ってヤマギワリビナの前に来ると,なんと丸五のあった場所が普請中である。看板を読めば丸五店舗改装のため4月半ばまで休業中とのこと。残念だがどうしようもないので神田明神通りを渡り,カレーのベンガルでキーマカレーを食う。店のテレビで野球,2回を終わって4-1。シネスイッチ銀座で「バーバー吉野」,「恋は五・七・五!」の荻上直子監督の新作「かもめ食堂」を観ようということになって山手線。有楽町で降りてシネスイッチへ。
この時点で1時ちょっと過ぎ,窓口のおねーさんが言うには「次回2:50からの回大変込み合っておりますが,1時間ほど前に来て並んでいただけばお座りになれると思います」。え,そんなにかい,と半信半疑のまま近所のルノアールで時間をつぶし,1時間前の1:50に戻ってみると,……なによこの大行列? 最後尾に並びつつ,ああ今日はとことん行列の日であったか,と呻いていると,蝶ネクタイの兄ちゃんが回ってきて「この列は既に『かもめ食堂』のチケットをお持ちの方にお並びいただいていまーす。なお,列のこのあたりはもう立ち見になる可能性がたいへん大きくなっております。あらかじめご了解くださーい」。つまりは立ち見の可能性アリと聞いて1時間前より早く来て並んだヒトが結構あり,正しく1時間前にやってきた我々は結果的に出遅れたカタチになってしまったらしい。座れるかな,270席もあるんだから座れそうなもんだがな,と不安のうちに列は進み,間一髪,なんと座れたのは我々まで。前から4人目になった時,兄ちゃんが「位置はバラバラですがあと4席あります」と言ったときには安堵のあまりヒザががくんと言 いましたな(なにしろそれまで小一時間立ってたのでね)。
で,かくのごとき艱難辛苦の末に鑑賞いたしましたる映画「かもめ食堂」。ヘルシンキの裏通りに「かもめ食堂」という名前の日本食堂(和食レストランではなく,日本食堂。ここがミソ)を開いたサチエ(小林聡美)。回転1ヶ月,初めて入ってきた客は日本かぶれのおたく青年トンミ(ヤルッコ・ニエミ),いきなり「だれだ,だれだ,だれだー」と歌い出し,「このガッチャマンの歌の続きを知りませんか」と言う。初めての客のこの質問が頭を離れないサチエ,街の本屋でフィンランドに来たばかりのミドリ(片桐はいり)を見つけ,いきなり「あの,ガッチャマンの歌,知ってます?」と話しかける。これが縁でミドリはサチエの店で働くようになり,もう一人マサコ(もたいまさこ)という女性も加わって……。一応話の根幹 は「細腕繁盛期」っぽいんだけど,別に商売の苦労話でも成功譚でもなし,そこに身を置く同胞・ニホンジン女性を通して北欧の「空気」を味わうような映画……というとつまんないみたいだがそんなことはなく,ちうか,オレの個人的評価を言えば,今のところこの監督の最高傑作だと。とにかく,並んだ甲斐はありました。映画館を出てマリオン前に来ると「日本,世界一」の号外を配ってる,キューバを破って世界一,いやめでたい。そしてご苦労様でした。
2006/03/20
地下鉄サリン11年目の月曜日。今年はあの年と日回りが全く一緒なのな,11年前の今朝,朝イチの打ち合わせのため前日から泊っていた浜松市内のホテルで起きてロビーのテレビで東京が大変なことになっていることを知ったのであった。相手先に向かうタクシーの中,ラジオを聴いていてどんどん被害者の数が増えるのに鳥肌が立ったのを思い出す。そういえば午後,あの日一緒だったサトーから魚の干物が届いた。美味しそうです,ご馳走さま。
一日家にいて平常営業。8時過ぎまで仕事をして映画を1本,「シンプル・プラン」(サム・ライミ監督)。兄ジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)とその友人ルー(ブレント・ブリスコー)と3人で父親の墓参りに行った帰り,ハンク(ビル・パクストン)は森の中で雪に埋もれた小型飛行機を発見する。中にはカラスに食い荒らされたパイロットの死体と……それからなんと440万ドルの現金が。ハンクは警察に届け出ることを主張するが,彼と違って失業中のジェイコブとルーは納得しない。結局,飛行機が発見されても誰も金を探しに来なかったら3人で山分けということで話はまとまるが,ハンクが金を家に持ち帰ると妻サラ(ブリジット・フォンダ)の意見はまた違って……。
ちょっとした出来心が次から次へととりかえしのつかない結果を生んでいくという,どことなくコーエン兄弟風の脚本を職人サム・ライミが実に見事にまとめあげた秀作。特に人並みの幸せを享受している弟に対し,愛情とコンプレックスを合わせ持つ兄を演じるソーントンの演技が素晴らしい。映画のあと,録画済みの「LOST」を再生すると今回はメイキングに近い特別編,結構楽しめたがここにわざわざ記すような展開は当然ながらなし。ただこの番組,ストーリーの行く末は出演者たちにも秘密で,シナリオも撮影の3日ほどまえに渡されると聞いてさもありなん,と思う。
2006/03/19
本日は一日休業。午前中は録画でNBA,デンバー vs メンフィス。デンバーのマーカス・キャンビー怪我で途中欠場,メンフィスのマイク・ミラー,キャリア・ハイの41点で勝利はメンフィスへ。午後は首の皮一枚を縫い戻した王ジャパン,「三度目の正直」の韓国戦。6回まではまたこれかよ,と思うような投手戦だったが,代打福留のツーランで均衡破れ,6-0で雪辱を果たすとともに決勝進出。相手はキューバである。頑張ってくれい。
そのままテレビの前に陣取り(というほどの部屋ではない,つうか,その部屋にいることはすなわちテレビの前にいる,ような部屋だが),昨日に続いてモーガン・スパーロックの「30デイズ」第2回「アンチエイジングを30日間」を観る。日本でも言われ出したアンチエイジングという言葉,つまりは「老化現象に抗って若さを保つ」くらいの意味なんだが,アメリカではこれを医療行為として行っている医師がいる。このアンチエイジング治療に挑戦するのは34歳で3人の子持ちのスコット,学生の頃は水泳をやっていて,腹筋もきっちり8つに割れていた腹がいまはまるでビア樽のよう。なんとか若いときの身体をとりもどしたくて30日間,以下のルールを守ることに。
- テストステロンとヒト成長ホルモンの注射,栄養補助剤の飲用。
- 定期的な運動と健康的な食生活への移行。
- 毎週健康診断を受ける。
晩飯のあとは借り物のDVD,「サンダーバード:フィルム・コレクション」と銘打った2枚組を一気上映する。監督はどちらもデイヴィッド・レインである。1枚目は「サンダーバード」。火星探査ロケット「ゼローX」の話。国際救助隊が政府の依頼を受けて妨害工作を阻止,ゼローXを無事に出発させるまでが前半,後半は火星から帰還したゼローXに故障が起き,墜落する機体から乗組員を無事に救出するのが後半なんだが,いま観ると話が完全にぶちきれてるし,そもそもこの設定で火星のシーンがこんなにおざなりでいいんか,と思ってしまう。いやしかし,火星にはサンダーバードのメンバーが行ってないからね。子供の頃はなんとも思わなかったどころか,早く地球に帰ってこい,と思いながら観ていたような……。
2本目は「サンダーバード6号」。国際救助隊の科学者ブレインズは新世界航空の依頼を受けて巨大飛行船スカイシップ号を設計する。その処女航海(処女飛行?)にアラン,ペネロープ,ミンミン,パーカーの4人が招待されるが,このスカイシップ号の乗務員はそのとき既に悪の組織ブラック・ファンタムのメンバーによって乗っ取られていたのだ。……話としてはこっちの方が好きだった,つうか今観ても映画として一貫性がある。ラストで出てくるサンダーバード6号は従弟がプラモデルを持ってましたな。そうそう,オレは秘密基地のプラモデルを持ってた。赤いランプが点いて1号以下が次々ト発進するやつ。……あれ,飛び出すしかけは単なるバネだったから,一度遊ぶと部屋のあちこちに飛んでったのを拾い集めねばならなか� �たっけ。
2006/03/18
昨夜遅い晩飯を焼酎とともにたきざわで済ませたため,二日酔いまでは行かないまでも午前中は機能半減。午後になってようやくマシンに向かい,昨日の分のノルマに立ち向かう。時折逃避するマージャンゲーム「AgendaMahjong」はそれでも完全制覇目前まで来たのだが……,ちと解説が必要か。このゲームの「チャレンジモード」は初回,日本で対戦する4人のうちの誰かを選び,中国,スペイン,キューバ,ブラジル,アメリカ(ニューヨーク)と勝ち抜いて行く。メンバーはラス抜けだが,ゲーマーはトップ以外では次に進めない(次回負けた場所から再開できる)。
今までオレは日本発の4人のうち3人で最終戦まで勝利を収めており,4人目も最終のニューヨークまで来ている。が,ここで加わったメンバーの「APPLE」というキャラが極悪・最強で,全然勝てない。だってあ〜た,5局に1局は配牌で国士無双十三面待ちを聴牌してるヤツにどうやったら勝てる? しかもハコ割れ終了ルールだから,オレが振り込まなくても誰かがそれに放銃すればその半荘は終わってしまうのだ。……ここまで来ちゃうともはや限りなくバグに近いと思う。いい加減ディスクから消しちゃおうかな,このゲーム(笑)。
夕方までかかってなんとか自分に課した予定をクリアし,メシ,フロのあとはフランス映画「隣の女」(フランソワ・トリュフォー監督)。幼い息子とともに片田舎に住むベルナール(ジェラール・ドパルデュー)とアルレット(ミシェール・ボームガルトネル),永いこと空き家だった隣家に空港管制官のフィリップ(アンリ・ガルザン)とマチルド(ファニー・アルダン)夫妻が越してくる。早速親しく近所つきあいを始めようとするアルレットに対し,ベルナールはなぜか消極的。越してきたのは偶然だったが,彼とマチルドは8年前,激しい恋の末にひどい別れ方をした恋人同士だったのだ。
最初はマチルドを避けていたベルナールだったが,「二人のことを現在のパートナーに話したかどうか」というマチルドの電話から焼けぼっくいに火がついてしまう。こうなることを恐れていたくせに,一度火がついてしまうとベルナールの炎は一途で見境がつかなくなり……。うーん,正直に申し述べればワタシ,昔の恋人にちと思わせぶりなモーションをかけるマチルドはともかく,このベルナールみたいなヤツは全然理解できない。ちうか,これぢゃほとんど発情期のケモノでんがな。同じシチュエーションでももそっとニンゲンとして葛藤できんのか,と。
……まぁたこのドパルデューという役者が,そういう「時々ケモノになっちゃうヤツ」を演じさせるとこれでもかというくらいに上手いんだよな(もしかして地ではないかと思うほどである)。つうことで,なんだか「価値観とか倫理観,もしかしたら身体生理機構まで自分とは違う人型異星人による『曾根崎心中』を見せられた」みたいな印象である。
お次は先日からWOWOWで放送が開始されたシリーズ「30デイズ」。これはあの「スーパーサイズ・ミー」のモーガン・スパーロックの作った実験ドキュメンタリー番組。映画でマクドナルドを30日間食い続けたように,毎回テーマを決めて30日間その体験をしてみるという……発想こそお手軽だがかなりリキの入った企画なのである。
本日観た第1回は「最低賃金で30日間」。1997年以来全く改定されていない米国の最低賃金法の妥当性を検証するべく,モーガンとその婚約者のアレックスが最低賃金で働きながら30日間生活してみる,というもの。ルールは次の3項目。
アラビア語の言葉"WA "とは何を意味するのでしょうか?
- 2人とも最低賃金で働く。
- 最初の所持金は1週間分の最低賃金(合計206ドルで税金を引くと178ドル47セント)。
- カードも口座も凍結し所持金以外は持たない。
いや,面白いと言ったら背筋に罪悪感が走るくらい現実は過酷である。最低賃金では健康保険にも入れないため,仕事でくじいた手首の痛みを気にしながら病院に行かずに働き続けるモーガン,30歳の誕生日を目前にして尿路感染症にかかってしまいふさぎ込むアレックス。姪と甥を迎えた休日に1個60セントのパンを2個買ったことが原因で始まる口論……。「格差はあってもいい」とほざいたどこやらの首相はこういう国こそがいい国だと言うんか(言うんだろうけどさ)。終盤「どこが世界一豊かな国だ!」と吐き捨てるモーガンの言葉はとても演技には見えなかった。
2006/03/17
午前中みっちり仕事をして昼少し前に家を出た。本日午後は予定山積み,まずは駅前やなか珈琲店で出る前に電話で予約をしておいたナチュラルブレンド300g 5番ロースト豆のままを受け取り,駅の向こう側のりそな銀行目黒駅前支店でお金をおろし,山手線に乗って有楽町へ。有楽町ガード下の立ち食い・後楽そばで天ぷらそばをかっ込んで約束の1時少し前にニッポン放送ロビー,ここでギタリストの榎本裕之さん,そして三遊亭圓窓師匠と落ち合って6番スタジオ,本日はこのお二人がライブなどでやっている「落語とギターのコラボレーション」のレコーディングなのだ。
榎本さんのギター演奏に続いて師匠の民話風の小咄,そのバックにも小さな音でギターがかぶっている,と言った感じの演し物……。いやレコーディングだから当たり前なんだけど,こういうものを何本も(録音したのは6本)間近で聴くというのは実に贅沢である。「落語とギターのための組曲 Vol.1〈副題未定〉」としてiJockey ブランドから……5月くらいになるのかな,にiTMSで発売予定。題名を見れば判る通りVol.2 以降も,またこれとは別に圓窓師匠が造りためてらっしゃる「珈琲にまつわる小咄」も「ぞろぞろ」っと企画してますどうぞよろしく。
4時過ぎにスタジオを出て次なる予定は銀座のアップルストア。ジニアス・バーに shiftキーが壊れたiBook(正確にはshiftキーが壊れたiBookG4にその部品を提供したiBook,だけど)を持ち込んで治せるもんなら治してもらおうというわけである。恥ずかしながら不肖フジモト,このジニアス・バーというのに相談に来たのこれが初めて,マシンで予約をするというシステムがわからずスタッフに迷惑をかけてしまった,ごめんね。なんとか午後5時からの予約が取れ,椅子に座って待っている間に読みかけの新書「はじめての〈超ひも理論〉宇宙・力・時間の謎を解く」(川合光著)を読み終えた。
この本,私にとっては「超ひも理論」ちうものを理解しようという何度目かの挑戦であり,(読み終えたばかりの今は)読む前よりも格段に量子物理学の権威になったような気がしている。わははは諸君,なんでも訊いてくれたまえ。……冗談はさておき(冗談だからね),この本が今まで読んだなかで最も解りやすいことは確かである。特に第3章「超ひもと時間の秘密」は読みごたえがあった。私は始めてあの「トンネル効果」というのがどーゆーもんなのか解りましたがな。もっと頭の柔らかい20歳くらいの頃に読めれば全てを完全に理解できたんぢゃないか,と(検証できないからなんでも言える,それにオレが20歳の時にはまだ「超ひも理論」は世に出てませんでした)。……しかしなぁ,我が過去の実績から予想するに,今こ の瞬間はすげー解ったような気になってるんだけど,どうせ1月もすると覚えているのは「クォークという名前はカモメの鳴き声から採られたんですよ奥さん」とかいう役に立たない話(いや,超ひも理論が全部解ったところでそれがオレの今後の人生でなんかの役に立つのか,といえば答えは否定的だけどさ)だけになっちまうんだよなぁ。
5時になって名前を呼ばれ,マシンを取り出してかくかくしかじか。「部品があるかどーか見てきます」と言って我がiBookを持っていった兄ちゃんが戻ってきたときにはshiftキーは完全復活,しかも「お代はいただきません」と。……なんつかかつてのアップルを知ってるオレのようなユーザには信じられないヒトコトではないか(笑)。うんうん,こういうちいさな好感の積み重ねがユーザのロイヤリティを生み出すのだよ,と一人宇奈月ながら……おい,宇奈月って何月だよ,あ,「うなづき」ぢゃなくて「うなずき」なのか,頷きながら店を出る。
お次の予定は虎ノ門ニッショーホールにて映画「サウンド・オブ・サンダー」(ピーター・ハイアムズ監督)の試写会。ニッポン放送主催だけど,ちゃんと同社のサイトから応募して当選したものです念のため。つうか,他の会社の試写会とかにも結構マメに応募してるんだけど,今まで当たったのはニッポン放送が2回だけ(今回が2回目)なのである……とか書いておけば月末のAXN主催「プロデューサーズ」の試写会券,あたるかな?
とにかく「サウンド・オブ・サンダー」の話。時は2055年シカゴ,世界初のタイムマシンを実用化したタイム・サファリ社は「白亜紀で恐竜狩り」ツアーを企画,大金持ちを対象に人気を集めていた。行き先は6500万年前のピッツバーグ付近,5分後の火山の噴火でどうせ死んでしまう一頭の恐竜をその直前に客に殺させるという「歴史を改変しない娯楽」のはずだった……。ところがある日,ツアーから現代に戻ったスタッフのトラヴィス(エドワード・バーンズ)は,11月だというのに異常に暑いことに気付く。
続いて湖畔には魚の死骸が打ち上げられ,植物が異常繁茂……。我々は過去を変えてしまったのか? タイムマシンの発明者ソニア(キャサリン・マコーマック)を訪ねた彼は「変化の波は波紋のように断続的に押し寄せる,まずは単純な植物から。最後の波が来たら人間が変わるわ」と告げられる。解決方法は一つだけ,6500万年前に誰が何をしたのかを突き止め,それを阻止すること……。レイ・ブラッドベリの原作「雷のとどろくような声」(「ウは宇宙のウ」所収)を読んだのは30年も前のことなので「え,こんな話だっけ」と思ったが,まぁ佳作と言っていいSF映画。ただ劇中,登場人物の一人が披露する「ハイゼンベルグの不確定性原理」に関する理解が間違ってることに,量子物理学のにわか権威はちとまゆを顰めたのであった。
2006/03/16
朝起きると会社のメールサーバが落ちていた。イノウエさんに連絡するとサーバのハードディスクがいかれたとのことで復旧にはしばらく掛かるという。業務に支障をきたすとアレなので,仕事用のメーリングリストの配信先に別アドレスを追加してもらう。……結局,一刻を争うような配信はなく,夕方復旧してみると同じメールが別経路で2通来る煩雑さだけが残った,しかたがないんだけどちょっと徒労感あり。昼飯の後,ワールドベースボールクラシックを背中で聴きつつ仕事に勤しむが試合は惜敗。イチロー,悔しそうだったなぁ。ワシも悔しさをバネに(というのはかなり強引な誇張だが)進捗はそこそこ。
ひさびさ座頭市映画を2本。まず1本目1967年,シリーズ第16作にして勝プロダクション第1作,敵役に三国連太郎を迎えた「座頭市牢破り」(山本薩夫監督)。ところは下総,二足わらじでとかく評判のよくない貸元・岩井の富蔵(遠藤辰雄)に一宿一飯の恩義を着せられた座頭市(勝新太郎),隣村,清滝の朝五郎(三国連太郎)の元に使いに立つ。その内容は,富蔵の賭場で負けた金を払えない百姓2人,50両で身請けされたしというもの。その博打がいかさまであることを知っている市は,黙って50両を用意した朝五郎の男に惚れ,富蔵を斬って凶状旅に出るのだった。
上州は桐生であんま稼業をしながらほとぼりの冷めるのを待つ市,そんな市の元にかつて富蔵の子分だった仁三郎(細川俊之)がやってきて,朝五郎が富蔵に代わって二足わらじを履き,八州回りの須賀畝四郎(西村晃)と組んで百姓を収奪しているという。半信半疑で銚子に向かった市は,農業指導をして百姓達に慕われ,かつては朝五郎も師と仰いでいた浪人大原秋穂(鈴木瑞穂)が,尊皇派の謀反人として須賀と朝五郎に拘引されたことを知る……。やぁ,やっぱり三国連太郎は上手いなぁ,マーロン・ブランドもかくやという悪役ぶり。玉川良一や唄子・啓助などの面々も懐かしい。ところでこの話,どこが「牢破り」なんだかさっぱり判らないんですけど?
もう1本はちょっと飛んで1970年の第21作,三隅研次監督による「座頭市あばれ火祭り」。金持ちたちが妾を売り買いするという「妾市」で商人の肩を揉む市。元武家の妻(吉行和子)を競り落としながら揉み賃をけちった男に腹を立て,夜道でこの女を強奪するが,女の亭主である浪人(仲代達矢)が後をつけており,夜明けに女は斬られてしまう。女を葬り,「闇公方」と恐れられる盲目の大親分(森雅之)の配下,黒子の貸元(金田龍之介)の襲名披露に現れた市,その言動によって大親分の逆鱗に触れ,抹殺指令を下される。湯屋での必殺の包囲網をかいくぐって宿場を出た市は,賭場で出会った美女・お喜代(大原麗子)と道連れになるのだが……。
ちょっと話が荒唐無稽になりすぎてついていけない。闇公方の組織はまるでショッカーのようだし,土地も名前も限定しないで「右の貸元」だの「面の貸元」だのと符丁めいたものを使うのもいただけない(勝新も脚本に名を連ねてるが彼のアイディアか?)。立ち回りもけれんに走り過ぎて,ここでの座頭市は目明きでも到底できないことをやってのけるスーパーマンである。やくざに憧れる若者・梅次(ピーター)と絡むサブストーリーがなかったらこれ,観るに堪えない映画になったんぢゃないか。せっかく大原麗子が出てるのにこりゃないよな,という駄作であります。残念。
2006/03/15
昨日に引き続き面倒な仕事。……最初からこの仕様で作っちゃうのならもっと楽なのだが,既存のユーザの造りためたデータを活かす形でこの仕様変更をするとなるといろいろとケアしなくちゃならないことが多くてタイヘンなのである(え,もっと具体的に書かないと判んない? いいの,判んなくて。単なる愚痴だから)。午後5時過ぎ,ようやく完成,と思ったら最後のランスルーで新たな不具合が露見。既に戦闘モードを解除したあとなので,これは明日にまわすことに。
目黒駅前のインド・ネパール料理屋(昼は食い放題のランチもやってる)ラクシュミーで晩飯,8時過ぎ,一昨日の雪辱戦のため目黒シネマへ。目当ては8:45からのレイトショー,「スクラップ・ヘブン」(李相日監督)。……「正義の味方」に憧れて警察官になったシンゴ(加瀬亮),志に反して配属は庶務課,日々のデスクワークにうんざりしている。そんなある日,乗っていたバスが拳銃を持った男にバスジャックされる。夢に見たように完璧なシチュエーション,しかし彼は恐怖にすくんでしまって動けない。他に乗客は二人,トイレ掃除人のテツ(オダギリジョー)と薬剤師のサキ(栗山千明)。犯人はテツを撃った後,銃をノドにあてて自殺する。
3ヶ月後,帰宅途中の道でシンゴは全快したテツに再会。あの時何も出来なかった自分へのいらだちを吐露するシンゴに,テツが持ちかけた提案はいわば「必殺仕掛け人」の現代版とでもいうべき復讐の代行業務だった……。うーん,オダギリジョーの躁病がかった演技がこういう脚本に乗ると相乗効果でとんでもないことになるな(あ,これ褒め言葉で言ってます,為念)。映画全体のトーンからいうとオダギリの演技がニュートラルで加瀬亮はちとウェット,栗山千明はドライ過ぎな感じがするが,もしかしたらバランスを考えてそうしてるのかも。ひさびさに暴力的な柄本明が秀逸。ラストはわけ判んなーいという声もあろうが(つうかオレの後ろの席に座ってたお姉ちゃんの意見だけど),「判ってなんぼ」という種類の映画では ないのでこれでいいのだ。オレはタイヘン面白うございました。
2006/03/14
終日仕事。ちと面倒な仕様で進捗悪し。先週,オンライン本屋・BK1からメールが来ていた「書評の達人列伝」だかのコメント・自己紹介書きに逃避するもすぐ書き上がってしまって失敗。ゲーム「AgendaMahjong」ではなんと大四喜四暗刻単騎のダブルリーチに2巡目八筒で放銃し(おめー,それ字牌で待てば字一色もつくぢゃないかよー),そのあまりのリアリティのなさに放心,すごすごと仕事に戻る。宴会の景品でもらってて言うのもナンだけどこのソフト,たまにロン牌見逃す(つまり当たってるのにロンができない)し,デザインとか動きは悪くないのに肝心のマージャン部分がイマイチである。
午後8時過ぎ,なんとか及第点と言えるところまで仕事を片づけて連ドラ,アニメを消化する。まずは「スターゲイト」の164話「放たれたVX兵器」。深夜,SG基地のスターゲイトが突然,いずこかへビーム転送されてしまう。監視カメラの映像から使われたのはアスガードの技術と知ったサマンサ(アマンダ・タッピング)は,これがアスガードの技術を盗んだザ・トラストの仕業であることを突き止める。
同じ頃,突然地球と連絡が取れなくなったアルファ基地には,かつてトクラが開発した対ゴアウルドの最終兵器VXガス弾を使った何者かの攻撃により,敵味方を問わないジャファ達の大量虐殺が行われているとの報告が入る……。ラストのご都合主義とメタ・レベルでのジャファ達の命の軽さは多少気になるが,ザ・トラストの「民族浄化」路線をテーマにしたなかなかの脚本と言えるだろう。しかしザ・トラストの資金供給源って誰なんだ。例の副大統領は失脚したんだろ? 違ったっけ?
続いてはアニメ「ケロロ軍曹」。今回上映は,第9話 「夏美 恋の行く手に来るクルル であります」&「日向 秋 ダイナマイトな女 であります」,第10話 「決戦! 第三大臼歯 であります」,第99話 「夏美 名犬ナッチー であります」&「ケロロ わんぱくケロッパー であります」,第100話 「ケロロ え?我が輩…誰?みんな…誰? であります」の計4話6エピソード,であります(どうしても感染するな,これ)。
なかなか傑作な本歌取りは,第9話後半の「ふしぎなメルモ」,第10話の「ウルトラセブン」(と,「エイリアン」も少し入ってるな,これ),第99話後半には「風の谷のナウシカ」(これに出てきた生き物アノマロカリスについて知りたい人はスティーブン・ジェイ・グールド著「ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生命進化の物語」を読もう!),第100話の「サザエさん」など。予告編によれば第101話でいよいよ,「オープニングテーマが『君にジュースを買ってあげる』に変わったときからタイトルバックに出ている見慣れぬ5人組」が出てくるらしい。……ちょっと楽しみであるが,こいつらってもしかして次回たった1回の出演のためにずっとタイトルバックに顔を出していたのだろうか? それとも今後レギュラーになるとか?
2006/03/13
昨日ここに「土曜日『面白いから読め』と私に『きょうの猫村さん 1』を渡した」と名指ししたヤマグチさん……というのが今日はもう一人出てくるので区別するためにエム・ヤマグチさんとするが,から「あの本は先日コイケさんのところに遊びに行った際にコイケさんから『面白いから読め,読め』と勧められて受け取り,土曜日に返そうとしたら同様な勢いで『これはフジモトさんにも読ませなくちゃいけないから渡して,渡して』と言われたためにお渡ししたものである」というメールが。というわけでどうでもいいでしょうが皆さん,震源地はコイケさんでした,と。
先日,もう一人のヤマグチ氏,アイ・ヤマグチ君からメールで頼まれたので,夕方代々木のライオンシェアに「起動しなくなってしまったMac」の調査がてら晩飯を食いに行く。マシンは力及ばす,というか内蔵ハードディスクが完全にイカレテいて復旧不能(DVDから起動してディスクユーティリティでリペアするとその作業が途中で凍ってしまうのだ)。なんだか引導を渡しに行ったみたいになってしまった,ビール奢ってもらったのにすいません。メインディッシュはキーマセット,ほうれん草とトマトとチキンのカレー添え。ご飯にパラパラのキーマが載ったところにスープ状のチキンカレーを混ぜて喰うのがタイヘン美味しいのである。8時過ぎ満腹して辞す。
山手線で目黒にたどりつき,8:45から上映予定の目黒シネマ「スクラップ・ヘブン」(併映が先週と同じ「サヨナラCOLOR」なので最終回の1本だけを900円で観ようと思ったのだ)に入ろうとすると入り口のところでスタッフの女性に呼び止められ,「今日は夕方から『サヨナラCOLOR』の竹中直人監督のトークショーがあった関係で時間が変更になっておりまして,「スクラップ・ヘブン」の上映は10:00くらいからになってしまうんですが」と。
それでは終わりは0時を過ぎてしまうではないか,ということで今日は断念。帰宅して連ドラ「LOST」の第18話「数字」を観る。いよいよ今回は陽気な巨漢ハーリー(ホルゲ・ガルシア)の過去暴き。マイケルのいかだ再建は進むが,海に出て他の船にその存在を知らせる方法がない。皆はかつてサイードが出会ったという森のフランス人女性ルソーの持つバッテリーのことを思い出す。サイードが解読に失敗したルソーの書類を一瞥したハーリーは,そこに書かれた一連の数字を見て顔色を失う。その一連の数字こそ,彼をここに連れてきた「呪いの数字」だったのだ。……引っ張りに引っ張ったハーリーの過去の話は見ごたえあり。しかしなぁ,だんだん話が宇宙人ぽくなってきたような気がするが大丈夫だろうか? 思いっきり不可思議ごとをばらまいておいて「ああ,それは全て宇宙人の仕業だったのです。なぜ宇宙人がそんなことをしたのかって? 宇宙人の考えることなんかわかるもんですか」つう終わり方はなしだぜ。
2006/03/12
11日土曜日は夕方まで仕事。それから金杉橋の焼き肉・貴賓室にて宴会。諸般の事情によりこの貴賓室が閉店することになったので,店主の友人でもあるオッティモ・ムラマツさんの呼びかけで最後の大宴会をやろうということになったのである。総勢……27,8名の盛況。最後には一同から同店スタッフへの花束贈呈などもあっていい宴でありました。なにかとタイヘンでしょうが頑張ってください(オレは飲み食いに忙しくて写真を撮らなかったのでこの写真はイサヤマ君提供である・多謝)。
翌12日日曜日,昨夜ちと飲み過ぎたか午前中はぼんやり。録画しておいたNBA,レイカーズ vs スパーズを観ると,なんとこないだのピストンズに続いてスパーズも負け。今年のファイナル最有力候補の2チームを相次いで破るとは,とてもウェスタンの8位にいるチームとは思えない。つか,オレの嫌いなレーカーズがなんでオレの観る試合に限って強豪を破るのだ,なんか悪意があるんぢゃないか(誰の?)。続いて昨夜ヤマグチさんから「面白いから読め」と渡された「きょうの猫村さん 1」(ほしよりこ著)を読む�FAQはこちらを採ってる)と,ダイヤとクラブのエースにスペードとクラブの8(The Complete Unabridged SUPER TRIVIA Encyclopediaはこっち)があることが判明した。こないだレコーディングした iJockey「トリヴィア・トーク」では後者を採ってるが,それはオレがそっちしか知らなかったから。なお,俗に言う「Dead man's hand」はスートを無視して,エースと8のツー・ペアならそう呼ばれるようである。
2006/03/06
午後イチ,珍しくも2週連続でミーティング於調布。イサヤマ君体調を崩したとかで欠席。週末は焼き肉宴会だぞ,大丈夫か? 帰宅後の午後6時,ISDNのTAを外して無事メタルプラスに切り替わったことを確認。過去一年間,いや二年間かな? 一度もファクシミリを受信しなかった子番号を捨てることで,基本料金その他もろもろ概算で月額1,000円くらいのコストダウンになるはずなのである。……そういうわけなので,今後ウチにファクシミリを送ろうという場合は,(1)その原稿がpdfなどデジタルデータになるならそうしてメールに添付。(2)郵送あるいは宅配便で送付(離島を除けば2日で確実に届くぞ),のいずれかを検討していただきたい。検討の結果いずれの案も不可能である場合,たぶんそれはオレではなく誰か似た名前の別人に送るべき書類だと思うので,もう一度その点を確認したほうがいい。そゆことで,よろしく。
晩,例によって映画1本,連ドラ2本を消化する。まず映画は大谷健太郎監督作品「約三十の嘘」。土田英生作の同名戯曲の映画化ということだが……。3年前,仲間の一人が金を持ち逃げしたことで空中分解した詐欺師たち。かつては年に五億稼ぐと言われたカリスマ詐欺師・志方(椎名桔平),インテリだが線の細い久津内(田辺誠一),凄腕だが酒にだらしない佐々木(妻夫木聡),その佐々木のマドンナで美貌の女詐欺師・宝田(中谷美紀),その相棒で今回初参加の横山(八嶋智人),そして,3年前に金を持ってトンズラした須藤を連れてきた手品師・今井(伴杏里)……。久津内の呼びかけで再び集まった彼らは,互いに含むものがありながらも仕事を成功させ,一億五千万という大金とともに寝台特急で大阪に向かっている… …。が,夜が明けると鍵のかかったスーツケースの中身はジャガイモに化けていた!?
あのさぁ,「面白いストーリーだから映画にしたら受けるんでは?」つうノリで映画を企画しても,それだけぢゃいい映画にはならないんぢゃないかなぁ。こないだ「暗黒街」を観たときに書いたように,現代の映画っていうのは「見せ物」としてのポテンシャルを考えた場合,「そこに生身の人間がいる」ということ以外の全ての点で舞台劇を凌駕しているわけ。なのに,舞台劇からインポートして面白さを上乗せできないんだったら,ナンのために映画にしたの? という話になるよ。あえて言えば「出演者が豪華な二時間ドラマ」を見せられたような感じ。椎名桔平はホント仕事に恵まれないヒトだなぁ,と思う。
続いて連ドラ。「LOST」の第17話「沈黙の陰」の主役はジン(ダニエル・ディ・キム)とサン(キム・ユンジン)のコリアン・カップル。言葉が通じないまま対立を深めるジンとマイケル(ハロルド・ペリノー)。ある晩,マイケルが建造中のいかだが何者かに放火される。マイケルとソーヤー(ジョシュ・ホロウェイ)はジンを疑い,彼を拘禁しようとするが,サンの英語での弁明とロック(テリー・オクィン)の理性的な意見で事態は収拾される。サンが英語を話せたことに衝撃を受けたジンだが,山から竹を切り出してマイケルのいかだ作りを手伝い始める。
サンの父親が裏社会のボスで,ジンは彼女と結婚するためその部下となって汚い仕事に手を染めざるを得なかった……というのは前のエピソードでわかっていたので,今回の過去暴きはそのディテールを補強したような感じ。……非ネイティブのオレがみててもジンの「英語不理解度」はわざとらしいという域に達していて,物語にアクセントをつけたいのは解るがやり過ぎだろうと思っていたんだが,今回のラストで少なくとも「ボート」という単語は知ってることがわかって安心。つまり解んないんぢゃなくてコミュニケーションを拒否してたということなのね。それよかサイード(ナヴィーン・アンドリュース)とシャノン(マギー・グレイス)ができちゃったことの方が「事件」か。
最後は「スターゲイト」の第163話「愛とプライド」。女戦士イシュタ(ジョリーン・ブラロック)が率いる反乱軍の基地が支配者モロク(ロイストン・イネス)の知るところとなり,ティルク(クリストファー・ジャッジ)の息子ライアク(ニール・デニス)を含むかなりの人数がSG基地に避難してくる。ライアクはイシュタの部下カリン(メルセデス・デ・ラ・ゼルダ)と結婚したいというが,ティルクは反対。息子との間にわだかまりを遺したまま,イシュタとともに反乱軍の会合に出かけたティルクはモロクの待ち伏せに遭ってしまう……。ひさびさにちゃんとゴアウルドとの戦闘があって嬉しい。一応設定が「現代」なので,地球上の政治をテーマにした話はどうしても生臭くなって良くないですな。
2006/03/05
日曜日,昼からお出かけ。目黒駅前の中華料理・美寿々でひさびさの「小柱入りたらこ焼きそば」美味し。午後2時前,目黒シネマ入り。本日上映作品1本目は,竹中直人監督・主演の「サヨナラCOLOR」。冴えない中年医師・佐々木正平(竹中)の勤める病院に,彼の高校時代のあこがれのヒト,及川未知子(原田知世)が入院してくる。舞い上がった正平は震える声で「ぼ,ぼくのこと覚えていますか?」と尋ねるが未知子は申し訳なさそうに首をかしげるだけ……。検査の結果,彼女の病は子宮ガンであることが判明。正平は一身を投げ打って自分のマドンナを治そうと決心する。
昨年,元FMACUSシスオペ,オオマサさんの追悼宴会に行ったとき,日本映画通の教師・キモト君から「スウィングガールズ」について「あれは竹中直人がダメ」という説を聞かされた。あんときはあんまりぴんと来なかったんだが,その竹中直人主演作であるこれを観て彼の言わんとするトコロが解ったような。……うまく伝わるかどうかわからんのだが,このヒトの演技とか演出とかって,ちょっとイタいくらいに抑制を欠く瞬間があるんだよね。もちろんそれが魅力になるケースもあると思うんだけど,この「サヨナラCOLOR」に関しては確かにキモト君の言う通りかな,と。
あ,それから原田知世(67年生まれ)と竹中直人(56年生まれ)が同級生かよ,というのはひとまず置くとしても(往年の「時をかける少女」ファンには「あほぼけすかたん,置けるもんか」というヒトも多数いそうだが),同窓会の幹事やってる忌野清志郎(51年生まれ)は病院の院長である三浦友和とモノホンの同級生ぢゃないか。どーみてもそれよかかなり年上な設定の役(未知子の手術を行う女医)を,よく中島みゆき(52年生まれ)が受けたなぁ。
2本立てのもう1本は「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(書くたび思うが長い題名だな)の本広克行監督が昨年夏に公開したオフビート・コメディ「サマータイムマシンブルース」。
夏のある日,とある地方大学のサークル「SF研究会」。昨日,クーラーのリモコンにコーラをこぼしてしまった男女7人はただひたすら暑さを呪いうだっていた。と,そこに忽然と現れた不思議な機械。年月日をセットするダイヤルと輝くレバー。どうみてもこれはタイムマシンではないか,では試しに昨日に行って,壊れる前のリモコンを持ってきてしまえ……と,冗談半分にレバーを引いたらこれがホンモノ。そうと知ったら我も我もとC調なノリで昨日に旅立つバカモノたち,かくして彼らが引き起こすタイムスリップ騒動は,……いや,奥さんこの映画はなかなかどーしてヒロイモノでしたぜ。
SF研究会とは名ばかり,学生達はタイムパラドックスの存在すら知らない(理解していないんぢゃなくて,知らない……そもそもこいつら何学部なんだか)馬鹿ぞろいだが,もちろん製作者側はそうではなく,SFファンなら手を打って喜ぶようなコネタが満載。ロケ地である香川県善通寺市の鄙びた町並みも吉。出演は上野樹里,瑛太,与座嘉秋,川岡大次郎,ムロツヨシ,長野宗典,本田力,真木よう子など。
2006/03/04
公約通り半日仕事。午後,叔母から電話があって中目黒の親戚の家にLANの設定に行く。今まで長男が一人で使っていたイッツコムの回線を今年専門学校に入った妹(彼女がオレの従姉妹の中では最年少である)を共有したいというので,先日ウチに余っていたルーターを渡したのだが,これがどうやっても繋がらないというのだ。虫が知らせてもう1台余ってたルーター(こっちの方が旧型)を持参したらこれが大正解,前に渡したやつはどうもイカれていたらしく,DHCPの設定にできないどころかそもそも設定画面にいけないのだった。無事解決,一応プロの面目を保つ(笑)。
帰宅すると注文してあった書籍が届いている。まずとるものもとりあえず井上雄彦の「バガボンド 22」を手に取る。強敵・吉岡清十郎を屠った武蔵はその旨を吉岡道場に報せたのち,疲労困憊して刀剣の研師・本阿弥光悦の屋敷に転がり込む。彼が三日三晩眠り続けているうちに京の街は清十郎死すという噂で持ち切り。昏睡から目覚め,数日後に迫った伝七郎との決闘に備えてその舞台と決めた蓮華王院を訪れた武蔵は,帰路,伝七郎そして祇園藤次と遭遇。片目を包帯で覆ったまま藤次を斬ってのけた武蔵に危機感を強めた吉岡の高弟たちは,巌流佐々木小次郎を伝七郎の身代わりに立てようと画策する。そしてその小次郎は,なんと武蔵と同じ光悦の屋敷に,光悦の母の客として逗留していたのだった……。
吉川英治のオリジナルに付かず離れずしながら,あの抹香臭さを微塵も感じさせずに男達のビルディング・ロマンを構築していく手腕は相変わらず見事。それと読むたび思うのだが,この漫画の大きな魅力の一つに脇役の登場人物が決してぞんざいに,簡単に描かれていないことだよな。吉川オリジナルには出てきたかどうかも思い出せない光悦の母の,実に生き生きして可愛いおばあちゃんぶりに感服しきり。
これを観て昔の映画は単純で深みがないというヒトがあるかも知れないが,この時代の映画は先行する舞台演劇に対する「台詞が聞こえず,色もついてない」という弱みと「興業コストが安く,編集が可能」という強みをよく分析して作られていたのだ。その弱みゆえ複雑なストーリーや心理描写は避けられ,その強みを活かすべく撮影技術,演出には工夫を凝らした。現代の映画は,ほとんどの点で舞台演劇を凌駕していると思うが実はその強みについて当時ほど突き詰めて考えていないんぢゃなかろうか。日本を代表する女性弁士・沢登翠の語りに新鮮な衝撃をうけながらそんなことを考えた。
2006/03/03
ひな祭り……は大勢に影響なし。午前中仕事をし,午後イチで有楽町へ。銀座の伊東屋で,かねてより欲しかった針無しのステイプラー「paper STITCH LOCK」なるものを購入(帰宅後試したがなかなかうまく綴じられない,企画倒れか)。アップルストアをひやかし,1時半にニッポン放送,オレが書いた iJockey の新作「トリヴィア・トーク」のレコーディングに立ち会う。バーのカウンターで披露できるような無駄知識を集めたコメント集で,読んでくださるのはヴェテランの山本元気アナウンサー。ギャングネタ,芸能ネタなど75本を1時間あまりで収録。オレが言うのもナンだが渋い声が内容にドンピシャで実にかっこいい。発売されたら,どうぞよろしく。
帰宅後は書類の整理に追われて仕事はできず,明日の土曜を半日仕事にあてることにしてホラー映画を2本。まずはあのメリン神父の若き日を描いたという触れ込みの「エクソシスト・ビギニング」(レニー・ハーリン監督)。舞台は第二次世界大戦直後のアフリカ,大戦中のある出来事がきっかけで神父を辞め考古学者となったメリン(ステラン・スカルスゲールド)は,イギリス軍が発見した「あるはずのない教会」の発掘調査を依頼される。教会はまだキリスト教がその地域に伝播する以前の建造で,しかも作られてすぐに土に埋められた痕跡があった……。
タイトルバックで監督がレニー・ハーリンと知ってちと萎えたんだが,その危惧は大当たり,いかにもハーリン風の大味な映画で,結構書き込まれている(ということは端々から伺える)脚本が台無し。このハーリンという監督は基本的に観客を馬鹿だと思っているので,心理描写も視線とかなにげないしぐさでするのはダメで,敵意も恐怖も敬愛もとにかくやたらロコツになるのがオレは嫌。……この辺,アメリカのお菓子がやたら甘いのに一脈通じるところがあると思うなぁ,あのチョコレートケーキが好みのヒトなら面白いかも。
それぢゃってんで次はソーセージ(ドイツ)風味。ブライアン・ヘルゲランド監督の「悪霊喰」。ニューヨークの司祭アレックス(ヒース・レジャー)は,恩師ドミニク(フランシスコ・カルネルッティ)の死の報を受けてローマに急行する。同じくパリから駆けつけた同僚のトーマス(マーク・アディ),そして自分が悪魔払いをした女性マーラ(シャニン・ソサモン)と共に調査を進めた彼は,臨終の床にある人間の「罪」を食べて生き続ける異端の存在,「罪喰い」(英語で Sin Eater。なのでこの邦題はめちゃくちゃである)に行き当たる……。一転してこちらは派手な演出がほとんどない……ホラーというより宗教劇。
ここで教会(神)に反逆するのは,邪悪な悪魔ではなく自らを犠牲にして「神」が見捨てた罪人を救う,仏教でいったら阿弥陀如来みたいなヒトなのである。キリスト教に帰依していないどころか熱心ではないにせよ浄土真宗門徒であるオレなど観ていて実に居心地が悪い。聞けばこの映画,その内容が問題になり,アメリカでは2年も公開が延期されたという。キリスト教右派の支持するブッシュの行状を見ていればさもありなんか。こっちはラクガン好きの方向きです(いや,冗談だけどさ)。
2006/03/02
午前中は家で仕事,午後2時頃家を出て郵便局へ行って確定申告書を郵送,目黒駅にある区役所の出張事務所で住民票の写しを取り,これをまた集合住宅の管理会社に郵送(またしても管理組合の理事長になってしまったのでいろいろと手続きがあるのだ)。その足で新宿に向かい,小田急ハルクを占拠したビックカメラ新宿店でバックアップ用のDVD-RとUSB接続のコンピュータ用外部スピーカを購入。マツキさん,カイヅさん,スドーさんと落ち合い,1Fの喫茶店でスドーさんの会社の業務ソフトについて打ち合わせ。5時過ぎに帰宅して夕食まで仕事続行。4本目のドキュメントを翻訳し終えてコイケさんに送付。やれやれ,肩の荷が一つ下りた。
入浴後,ジャックダニエルを啜りながら映画「ネバーランド」(マーク・フォースター監督)を観る。ファンタジー戯曲の名作「ピーター・パン」の誕生秘話。20世紀初頭のロンドン,劇作家のジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)は,新作に対する不評と妻との不仲から家にいたたまれず,公園のベンチで構想を練るようになる。そこで出会ったのがデヴィアス家の未亡人シルヴィア(ケイト・ウィンスロット)とその4人の息子たち。中でも父親の死に傷つき少年らしさを失っている3男のピーター(フレディ・ハイモア)に,ジェームズは幼い頃の自分の姿を重ねてしまう。
シルヴィアや少年たちと過ごす時間が増え,妻の浮気,そして離婚というゴシップの中,バリはピーターを主人公にした新作「ピーター・パン」を書き上げ,その初日に彼らを招待するのだが……。人種差別を扱った前作「チョコレート」でもそうだったが,このマーク・フォースターという監督は「和解」を演出するのがとっても上手である。病(結核か?)で死の床にあるシルヴィアの前で演じられる劇に対して,ジェームズに絶縁を迫っていた彼女の母エマ(ジュリー・クリスティー)が真っ先に拍手をするシーンは見事のひとこと。お勧め。
2006/03/01
今日から3月。忙しいのは同じなんだか,午後ぽっかり時間が空いたのでこの隙(何の隙だか)にってんで一挙に確定申告作業をやっつける。暗くなるまでかかったが一応終了。これを明日投函すれば懸案がひとつ片づく。昨年は暇で収入も少なかったから必要経費の領収書も少なく比較的作業は楽……あんまり嬉しくないな。確定申告なんかタイヘンでもいいから,月イチくらいで連載コラムとか書かせてもらえると生活の方が助かるんだが……。
とにかく書類作りを済ませて飯を食い,シカゴがミネソタに勝った試合(NBA)を後半だけ観て映画,三谷幸喜脚本・監督の「みんなのいえ」を観る。脚本家の飯島(田中直樹)と妻の民子(八木亜希子)が家を新築することになり,民子の大学の後輩であるインテリア・デザイナーの柳沢(唐沢寿明)に設計を依頼する。デザイナーで建築免許を持っていない柳沢は,登記その他の手続きや施工を大工である民子の父・岩田(田中邦衛)に任せようと提案。一同それはいいアイディアだと合意するが,アメリカ風のモダンな家を建てたい柳沢と,昔かたぎの大工で和室にこだわる岩田はいちいち衝突。間に入る飯島はハラハラオロオロを繰り返す羽目に……。
三谷幸喜の実体験を元にしていると聞いたが,ほんぢゃ奥さん(女優・小林聡美)の親父さんが大工なのか。それともそこは創作なのかしら。前半ギャグを狙ったのか唐沢寿明演じるデザイナーが過度にエキセントリックなこと(ていうかそのエキセントリックさが後半消えてしまうので変),後半繰り返される紛糾と小康が一本調子に感じられるのが惜しい。トーンとしてのほのぼのハートフル路線は失敗していないと思うがイマイチ感あり。あと,民子が父親を「長一郎,長一郎」とファーストネームで呼ぶのがやたら気になるんだけど,もしかしてそんなこと言うのはオレだけですか?
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